健康への追求と芸術家の感性から生まれた究極の発酵食品

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ドイツにおけるオーガニックやヴィーガンへのこだわりや前衛的な発想には感心させられることが多いですが、今回紹介するmimiはこれまで自分が見てきたものや想像を遥かに超える活動や発想と言えるでしょう。

マルクス清水さんと奥様の麗子さんが運営するmimiは100%オーガニック素材のみを使用した手作り発酵食品の専門店として、今年の3月モアビット地区の閑静な住宅街にオープンしました。味噌、醤油、麹、納豆、テンペといった日本人にとっては日々の食事に欠かせない大事な調味料や食品の専門店がドイツの首都ベルリンに出来たとあって話題騒然となっていましたが、それは単に珍しいからという理由ではなく、オープン前からすでにマルクスさんの作る味噌や醤油には多くのファンがついており、直営店が出来ることをみんな待ち望んでいたからなのです。

mimiオープニングレセプション。外にも人集りが出来るほどの大盛況

「僕はもともとヴィーガンなので身体に良い食事や食材を自分自身で調べたり、勉強していたんです。そこで日本の伝統的な発酵食品に行き着いて、麹から作り始めました。8歳まで日本にいたことや義母が味噌を作っていたのでその影響も大いにありますね。でもそれは自分の健康のためであってビジネスのためでは全くなかったんですよ。3年前に友人の勧めでワークショップをやることになって、それがすごく好評だったんです。そこから不定期でワークショップをやるようになったんですが、身近な人からどんどん広まっていってミシュラン認定のレストランやシェフからも注文が来るようになったんです。気付いたら1年で13軒もの契約になっていて自分でもとても驚きました(笑)需要が増え、自宅ではとても対応出来ない量になってしまったので作業スペースとワークショップスペースも兼ねて店舗を出すことにしたんです。」

mimiが提供する発酵食品は、ドイツ国内から仕入れた材料をメインに、ないものはヨーロッパの他国から仕入れた100%オーガニックの材料のみを使用して作られています。こだわり抜いた材料を発酵させた後、ワインやウィスキーが入っていたヴィンテージの木の樽やザワークラウトなどドイツの伝統的な漬物に昔から使用されていたセラミックの壺に入れて熟成させていきます。そうやって時間と手間をかけて出来た発酵食品たちは、低温殺菌されていないため生きたままの酵母として体内に吸収することができ、腸の働きを良くすることをはじめ健康維持へと繋がっていくのです。

豊富にある種類の中でも白味噌、薄口醤油、白醤油が特に人気とのことですが、納豆も日本人だけに関わらず人気のようです。他にもそば塩麹、赤カブ味噌などここでしか手に入らない食品やドイツならではの食材を活かしたオリジナル食品の開発にも力を入れています。全て独学によるものであり、その努力と類い稀な才能に感心せずにはいられませんが、なんと発酵機械まで自分で作ってしまったという脅威のストーリーもあるのです。

「日本から取り寄せたらとても高額になってしまうし、時間も手間も掛かってしまいます。ドイツで手に入る機械をベースに自分で改造して作りました。僕はアーティストでもあるのでとにかく作ることが好きなんですよね。」

店舗のバックヤードは作業場になっており、お手製の発酵機材や発酵室があります。

実は、マルクスさんはオランダとドイツの美術大学を卒業し、ドイツ、インド、メキシコ、日本など世界各地でエキシビジョンを開催し、賞を受賞するなど高い功績のある彫刻家でもあるのです。麗子さんも同じくアーティストであり、二人の芸術的な感性は洗練された取り扱い商品やロゴデザインが象徴しています。また白とガラスを基調とした店内はベルリン在住の日本人建築家・大崎洋一さんが手掛けており、ど真ん中の棚に樽が並べられ、下から見上げるという非常に斬新なデザインになっています。

店内では、商品のテイスティングが可能となっており、お客さん一人一人に対してマルクスさんとReikoさんが商品の説明をしてくれます。どんな食材が使われていて、どんな味で、どんな効果があるのかを作り手自身によって知ることが出来るのです。ワークショップにおいても定期的に開催されており、味噌や醤油の作り方を知ることはもちろん、カルチャーコンテンツとのコラボレーションイベントも予定しているとのことで、今後ますます広がっていく活動や商品開発が非常に楽しみです。

キャプション:マルクス清水さん(左)と麗子さん(右)二人が掛けているのはmimiのオリジナルエプロン。

mimi オフィシャルサイト
http://www.mimiferments.com/

mimi Facebook
https://www.facebook.com/mimiferments/

マルクス清水 プロフィール
http://www.markusshimizu.com/english.html


Author: 宮沢香奈/Kana Miyazawa

ライター、コラムニスト、コーディネーター

長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーを取材するなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’s FUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。

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