使用済みおむつから作った堆肥で幼児が木を育てるプロジェクト

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晴天に恵まれた10月中旬、ベルリンのフリードリヒスハイン区に位置するNIRGENDWO環境教育センターにて、10数名の幼児たちがFelsenbirnen(フェルゼンビルネンと呼ばれる小さな実のなる苗木を植える植樹祭が開催された。

同イベントは、​​生分解性のおむつライナーを開発、サブスクリプションモデルとして提供する予定のベルリン発のスタートアップ「DYCLE/ダイクル 」のプロジェクトの一環。「DYCLE」は、赤ちゃんの排泄物を堆肥化させ、その堆肥を使って木を植えて育てるといった循環システムを提唱している。

昨年の夏に乳幼児のいる20家族に提供されたおむつが安全な処理のもと、栄養豊富な土として生まれ変わったため、次なるステップとして、その土を使い、Wriezen Parkのガーデンの一角に苗木を植える日がやってきた。

フリードリヒスハイン・クロイツベルク区役所とZukunft Pflanzen e.V.(未来の植物協会)協力のもと開催されたイベントには、幼児とその家族が参加。

フリードリヒスハイン・クロイツベルク区では、毎年、乳幼児から約2,500トンのおむつが廃棄されているとのこと。これは、満杯にしたゴミ収集車約300台分に相当する。紙おむつには環境に配慮した資源を節約できるさまざまな代替品があるにもかかわらず、ドイツにも100%堆肥化できるおむつは市場にない。そして、10%の家庭でしか布おむつが使用されていないという現状もある。エコ先進国と呼ばれ、地球環境に対して意識の高い人が多いように思えるドイツにおいても、おむつ事情はまだまだ完全なシステムを構築していないようだ。

「創造的かつ革新的な方法で持続可能性を促進し、子どもや大人の環境教育に貢献するプロジェクトは、区での生活をより魅力的なものにしてくれるでしょう。おむつゴミの削減に貢献し、“おむつサイクル”プロジェクトに関わったすべての保護者とダイクルの発案者に感謝します。」と、植樹祭にも参加したクララ・ヘルマン区長がコメントを残している。

また、DYCLE代表の松坂愛友美さんは「この場所でパイロットプロジェクトの完成を迎えられたことを大変感謝しています。茶色い原っぱに緑の公園ができること、近隣住民や市民が参加して共に学ぶことができることをとても嬉しく思っています。」と、語る。

願いごとを書いて、植えた木に吊していく。

母乳で育てているお母さんは必然的に健康に気を使っており、また乳幼児の食事に気を付けている家族は多いことだろう。そういった“良いもの”を摂取している乳幼児の排出物は栄養素が多く、良い堆肥が作れるといった仕組みだ。子供とともに木々が成長し、後に実が付いたら今度はそれをベビーフードへと加工することができる。これこそが、「DYCLE」が目指す画期的な循環システムである。


また、同プロジェクトでは、地域との密着や協力を得ることが欠かせないという。植樹祭の会場となったNIRGENDWO環境教育センターは、広大な敷地を誇る環境文化施設として機能している。緑地を増やす活動や近隣住人とのガーデニング、家族で参加できるイベントやワークショップなども開催している。取材当日も、工業地帯からエコロジーに配慮した公園へと発展したWriezen Parkの様子を見学する子供向けの体験型アクティビティが実施されていた。

「DYCLE」が開発したおむつライナーは、地域の工場で出た麻の副産物を吸収剤の原料に使用し、100%堆肥化させることが可能。そのおむつライナーと保護者から使いやすいと人気の布おむつカバーパンツ、堆肥化させるための炭の粉、そしてバケツをセットとして提供している。炭の粉には微生物が含まれており、生分解を促す役割を果たしてくれる。バケツが満杯になったら地域の協力先である保育園やファミリーセンターなどへ持参する仕組みとなっている。

植樹祭の後には、撮影スタジオ「Atelier Gardens」にて、堆肥に欠かせない炭作りのワークショップも開催された。このように、おむつだけではなく、多様な市民層を巻き込んだ循環システムに関するさまざまなワークショップを精力的に行うことで活動の幅を広げている。

Photography: Chihiro Lia Ottsu (植樹祭/NIRGENDWO環境教育センター)

Text by Kana Miyazawa