ベルリンの共同菜園が目指すオーガニックな暮らし

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街の中心地であっても豊かな緑に囲まれているベルリンは歩いているだけでも心地良い。平日の昼間から公園で寝転がったり、語らったり自由気ままに寛ぐ姿が多く見られるのもこの街の特徴だろう。そんなベルリンのど真ん中に”コミュニティー・ガーデン”と呼ばれる共同菜園があるのは知っているだろうか?郊外を除きアパートメントに住む人がほとんどのベルリンにおいて、自家菜園をやりたくてもバルコニーで簡単なガーデニング程度になってしまう。そんな人のために存在するのが”コミュニティー・ガーデン”なのだ。

今回は、別名”トルコ人街”と呼ばれる移民地区Wedding(ウェディング)にあるコミュニティー・ガーデン”himmelbeet(ヒンメルベエット)”を紹介したい。”空のベッド”というかわいらしい意味を持つここは、もともとショッピングモールの屋上駐車場からスタートし、2013年に面積1700㎡ものを広さを誇る現在の場所へと移転した。ベルリン市内に点在する他の”コミュニティー・ガーデン”と同じく、一部は地元住人が個人菜園として所有出来るスペースとなっており、それ以外のスペースは従業員とボランティアスタッフが協力し合って有機野菜やハーブを栽培し、販売を行っている。

それ以外にも採れたものは園内に併設されているカフェのメニューに使用されており、筆者が特に薦めたいのがこのカフェである。独特の風味がクセになるオーガニック生ビールが飲めることも魅力の一つであるが、2015年にオープンした同店は廃材や粘土、泥といった再生可能な資材のみで作られており、特製のピザ窯も完備、また屋根の上では蜜蜂を飼いオリジナルのはちみつを製造している。プラスチックを一切使わず地球環境に配慮しているというだけでなく、程良く廃れたウッドと菜園のグリーンとが絶妙なコントラストを生んでいる。

ナチュナル思考の団体や施設にありがちな極端なヒッピーさは全く感じられず、むしろ洗練されている。建築賞を受賞しているというのも納得のフォトジェニックで開放感溢れる空間となっている。

同園では定期的にワークショップも開催されており、毎月第一金曜日はピザ作り、それ以外の金曜日はパン作りのワークショップが開催されている。しかも、参加費はドネーション制で自分で生地を持参するだけで予約なしで誰でも参加出来る仕組みとなっている。
他にも地球環境を題材にした映画を上映するガーデンシネマや自転車修理の会といったユニークなイベントも開催されている。

こうしたワークショップやイベントは、ベルリンに住む様々な人種の人々が一堂に集まり、植物を育てたり、料理をしながらお互いを知っていくコミュニケーションの場となることを目的としている。また、1人ではなく、グループで料理や作業をシェアすることによって経済の節約やCO2の節約にも繋がるといった概念を持っている。

himmelbeet(ヒンメルベエット)は本来そういった目的のために設立された非営利団体であるが、実は現在存続の危機に晒されている。投資家やデベロッパーが躍起になっているベルリンの都市開発の影響により、契約期間の延長が認められないという悲しい現実を突きつけられているのだ。抗議活動や転居先を探しているが、今年の10月で閉園となってしまう可能性も多いにある。
どうにかこの素晴らしい環境を維持出来る方法はないのだろうか?と考えずにはいられない。

himmelbeet
Ruheplatzstraße 12, 13347 Berlin
https://himmelbeet.de/

Author: 宮沢香奈/Kana Miyazawa
ライター、コラムニスト、コーディネーター

長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーを取材するなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’s FUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。

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