世界最大級のオーガニック見本市 “BIOFACH 2022” レポート① ジェトロ(JETRO)主催「ジャパンパビリオン」で注目を集める日本茶

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ドイツ・ニュルンベルクにて、7月26日から29日の4日間に渡り、世界最大規模を誇るオーガニックフードとナチュナルコスメの国際見本市「BIOFACH / VIVANES(ビオファ/ヴィヴァネス)」が開催された。

これまで毎年2月に開催されてきたが、コロナ禍の影響により今年だけ”Summer Edition”と題して、7月に特別開催され、世界94カ国から2,276社が出展し、137ヵ国から24,000人を超える来場者数を記録した。特に、世界中のオーガニックフードが一堂に集結する「BIOFACH」への注目度は非常に高く、展示会場となった7つのホール全てが活気に満ち溢れていた。食品だけに限らずオーガニック製品への関心の高さや市場拡大は日常生活からも実感していたが、コロナ禍でより一層健康や食事に気を遣う人が増えたことも理由の一つなのだろうか?

ドイツの統計企業「Statista」によると、2020年の世界のオーガニック製品の市場は1,207億ユーロと過去最高となっており、EUの520億ユーロが全体の4 割以上を占めている。また、有機農業研究所(FiBL:The Research Institute of Organic Agriculture)によると、EUのオーガニック小売売上高は 448億ユーロで、中でもドイツが150億ユーロと最も大きく、アメリカに続く世界2位となっており、オーガニック先進国と呼ばれる理由を数字でも証明していることになる。

「ドイツではコロナ禍により自宅で食事をする機会が増え、健康に気を使ったり、食材にこだわる人が増えています。以前から問題視されている地球環境や気候変動への関心度もこれまで以上に高まっています。ジェトロ(JETRO)では、日本産の有機栽培のお茶や調味料、発酵食品といった日本独自の健康食品を推奨する中で、免疫力アップの効果やメンタルの健康にも繋がることを広げていきたいと思っています。特に、日本の緑茶に関しては、そういった効果が実証されていますし、農林水産・食品の対ドイツ輸出品目の中で最大品目で、ドイツは緑茶の輸出先として、米国に次ぐ世界第二位という点にも注目しています。」

そう語るのは、日本貿易振興機構(ジェトロ/JETRO)ベルリン事務所長の和爾俊樹氏だ。JETROがオーガナイズする「ジャパンパビリオン」には、日本から日本茶メーカーや調味料、発酵食品などの14社が出展し、多数のバイヤーから注目を集めていた。「BIOFACH」のような世界最大規模を誇る見本市に、日本のメーカーが単体で出展するには、かなりの労力と予算が必要になってくるとのこと。JETROが窓口となって取りまとめる「ジャパンパビリオン」に参加することによって、出展がスムーズになるだけでなく、世界のバイヤーからも信頼を得られるメリットもある。

アメリカ、スペインやフランスなどでも展開している京都の老舗「茶匠六兵衛」
コレクションしたくなる愛らしいデザインのスチール缶で販売。

ドイツでは、缶ではなく、紙パックや他の素材のパッケージの方が印象が良いと聞いた。中身が空になったら捨てずに他に利用すればエコに繋がるのではないだろうか?と筆者は考えてしまうが、確かに市場に出ているお茶や紅茶のほとんどは紙素材のバッグか箱に入っている。

静岡の「株式会社 流通サービス」代表取締役の服部吉明氏 (左)

120年の歴史を誇る老舗の日本茶メーカーであり、ニューヨークに3店舗のカフェを構え、ドイツのオーガニックティーやサプリメントメーカー「Sunday Natural」と取引を行うなど、精力的にグローバル展開を行っている。

自社開発したソーラーパネルを導入した自社ファームで栽培された最高品質の茶葉。抹茶においては、茶葉栽培から加工、石臼挽きまでを一貫生産しているとのこと。
流暢な英語で対応する「和香園」下平氏(左)とJETROベルリン事務所長・和爾氏(右)
コーヒー豆のようなオシャレなパッケージが目を引く、鹿児島の「和香園」 少し癖のある旨味や風味のお茶が好きな筆者のお気に入りはブラックティー(写真右端)

同メーカーでは、自然生態系を尊重し、害虫を吹き飛ばす機械を独自開発し、自社ファームに導入しているとのこと。

高千穂郷産のしいたけ専門店「杉本商店」 しいたけキャラに扮した代表取締役の杉本和英氏。

ヨーロッパでは、しいたけをミンチやパウダーに加工し、具材や調味料としてすぐ使える製品を打ち出しているとのこと。偶然にもベルリンのオーガニックアジアショップのドイツ人女性オーナーがヘルプスタッフをしており、同メーカーのしいたけも取り扱っているとのことで近々訪れてみたいと思う。

連日の暑さから抹茶かき氷を振る舞う日本茶メーカーのブース前には人集りが出来ていた。こういった気の利いた”おもてなし”はやはり日本ならではである。

他にも「BIOFACH」会期中には、JETROと日本食品海外プロモーションセンター「JFOODO」とのコラボレーションによるワークショップが開催され、ベルリン在住の日本茶大使・田辺結美氏の指導のもと、玉露の嗜み方として、お湯の温度や蒸らす時間によって味や旨味、風味が変わることを教えてもらった。また、残った茶葉は捨てずにお酢と醤油と混ぜておにぎりの具に再利用できるなど、普段では知り得ない知識を得ることができた。

他にも、深蒸し茶、ほうじ茶、和紅茶、宇治煎茶などの水出しで美味しく飲める方法が披露され、スパークリングウォーターにすることでお酒の代わりになるなど、興味深い飲み方を教えてもらった。

お茶より紅茶より何よりもコーヒーが大好きで、夏にはアイスコーヒーも嗜む筆者にとって、水出しのお茶に関しては全くの素人だった。出展メーカーのこだわり抜いた抹茶や煎茶などを水出しで頂き、その美味しさに驚くとともに、その道のプロから伝授してもらった良質の茶葉や煎れ方を参考に、美味しいお茶へのこだわりを始めてみたいと思った。

Text by Kana Miyazawa (Berlin)