日本の発酵食 ベルリン事情
近年のヨーロッパでの発酵ブームもだいぶ落ち着き、ベルリンでは多種多様な発酵食品を日常的に取り入れるのが定番化してきたように思える。
私が飲食業で働いていたのは今から5年程前だが、当時から既に日本の麹はコージ、味噌はドイツ語読みでミゾ、旨味はウマーミ、酒粕はサケカースと言った具合にそのまま通じる単語も多々あった。ちょっとしたマニアだと、ぬか漬けやどぶろく辺りも知っていて驚かされたものだ。
そんな日本の発酵食品ブーム中に、シェフ、ファーマー、ファーメンター(発酵家)とマルチな才能に溢れたアレックサンダー•ナシアー (Alexander Nasir ※1)と、発酵コラボポップアップをした時の事を紹介したい。
ドイツと言えば、キャベツを塩や香辛料で発酵させたザワークラウトが定番だが、彼のレシピは南ドイツに住むお婆ちゃんのレシピで数種類のキャベツとりんご、秘伝のスパイス各種で仕込むユニークで癖になる味だ。
家族の仕事の都合でイエメン、クエート、ムンバイなど8カ国に暮らし、子供の頃から料理が好きで各国の味を舌で覚えて育ったため、使用するスパイスとハーブの種類や味の方向性はドイツ料理だけには収まらない。地元のオーガニックマーケットで集めたチリとスパイスを何種もブレンドした発酵チリソース、フルーツやフレッシュハーブを使った発酵カクテルなどのフレーバーは彼にしか出せないオリジナルだ。
そこに私がドイツ産のオーガニック食材で作った味噌や紫玉ねぎ塩麹を合わせたヴィーガン創作料理と、アマザーケ(甘酒)で甘味を付けた発酵カクテルなどのプロダクト販売を行ったポップアップは、サステナブルファッションにフォーカスし、デザインから裁縫までを手がけるオウレリア・ポメーレ (Aurelia Paumelle ※2) のアトリエ兼ショップで催され、ヘルシーでサステナブルなライフスタイルを意識した若者や日本人ママと子供達、そしてフード業界関係者などが訪れ大盛況だった。
今後もこうして現地の発酵食と上手く混ざり合いながら、日本の発酵食がベルリンのキッチンに拡がり、手前ミゾを各家庭で仕込むのが当たり前になる日が来ることを、密かに夢見ている。
Alexander Nasir ※1
https://instagram.com/sym.biont?igshid=YmMyMTA2M2Y=
Aurelia Paumelle ※2
https://instabio.cc/Aureliapaumelle
Text by Yuka Sagai