ベルリンのクラブに併設されたハイエンドなベジタリアン・レストラン
COOKIES CREAM
17歳の時、ベルリンへやってきた“COOKIE”ことハインツ。90年代中頃、彼は若干21歳で、当時住んでいた部屋の地下に最初のバーをオープンさせました。その4m四方の小さなスペースにあったのは、カセットテープデッキとバケツが2つだけ。そのうち1つはグラスを洗う水桶として、もう一つは雨漏りの受けるのに使われていました。「火曜の夜オープンするバー(Dienstagsbar)」「木曜の夜オープンするバー(Donnerstagsbar)」としてやっていましたがなかなか名前が定着しなかったこともあり、そのうちにハインツのニックネームから“COOKIES”と呼ばれるようになりました。COOKIEはこれまでも数々のバーやレストランをオープンさせては、次のクリエイティブへのブレイクとしてクローズさせてきましたが、クラブ、COOKIESも7回ほど場所を変え、最後に落ち着いたのがベルリンの中心部、ミッテのウンターデンリンデンの大通りからほど近い場所でした。
COOKIESは18年もの間、ベルリンの夜の社交場として重要な役割を果たしてきましたが残念ながら、クラブは2014年7月19日を最後にクローズ。彼が最初に店をオープンしてから変わらず持っている「同じ形態のまま、長くはやらない」というモットーの元、COOKIESももれなくその形を変えることになりました。ほどなくして2014年11月に“CRACKERS”としてオープンしましたが、レストラン・バーがメインの業態で、音楽も楽しめるスペース、という位置づけ。別の機会にこのCRACKERSのレポートもお届けします。
私達が取材したクラブ併設のレストラン“COOKIES CREAM”はそのままの形で営業を続けています。「NYの有名ベジタリアンレストランDirt Candyがベルリンにあったらきっとこんな店になる」ともいわれています。店のエントランスが非常にわかりづらいため、WEBのトップ画面では美女による道案内があるので必見です。
ウンターデンリンデン大通りを渡り、ウェスタングランドホテルの敷地内の裏路地をに入り、その暗がりを見上げ巨大なシャンデリアが見えたら、すぐ先にエントランスが見えます。レストランではなく、クラブかバーといった趣の鉄の扉。壁に飾られた大きな幾何学模様のアートワークには「ficken.(f*ck you)」と書かれ、その右下には某カード会社のロゴが描かれていたり…と白いクロスにテーブルセットが組まれたレストランにしては、挑戦的なアートがあって、とてもベルリンらしいです。
オーナーCOOKIE自身がベジタリアンだということで、COOKIES CREAMはベジタリアン・レストランという形を取りました。ベジタリアンといっても、メインは卵や乳製品を食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」向けなので、ヴィーガンの人は事前に相談するのがベター。「食事を楽しむ」という観点からすると、いくつかのベジタリアンレストランは味付けがシンプルすぎたり残念な感じを受けることもありますが、その点ここCOOKIESCREAMは、期待を裏切らずに食欲と感性を満足させてくれます。
メインシェフのステファンの繰り出す料理は、どれも独創的。オープン当初から「新鮮な旬の野菜を使う」ということにこだわり、フランスのレストランガイド“Gault et Millau”では20点満点中14点を獲得し、高い評価を得ました。3、4種類の中から選べるプリフィックススタイルで、スターター、メイン、デザートのコースで39€。単品でもオーダーは可能で、価格はそれぞれスープ(10€)、スターター(11€)、メイン(22€)、デザート(11€)。週ごとにメニューが変わりますが、例えばパルメザンチーズのダンプリング(蒸し団子)などの人気のメニューはソースやトッピングにアレンジがされて頻繁にメニューに登場します。
羊のミルクから作られたヨーグルトにハイビスカスのソースでコーティングしたり、西洋わさびは摺ったものを添えるのではなくフワフワの軽い泡にしてトッピングしたり、とにかく1品1皿、じっくりと目と舌で味わいたいものばかり。みずみずしさと濃厚さ、食感のコントラスト、ほのかな酸味や甘み、苦みのバランス、ハーモニーがどれも素晴らしい料理でした。乳製品や卵が食べられるベジタリアンの人はもちろん、食事で五感を刺激されたいと思うときにおすすめしたい店。
Author: Kumi Nagano
Photographer: Asami Uchida
COOKIES CREAM
www.cookiescream.com
55 Behrenstraße 10117 Berlin
+49 (0)30 27492940
