シリア難民とのコラボレーション・レストラン Restaurant SYR

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Photo by Asami Uchida asaphotograph.viewbook.com
2011年のシリア危機以降、国際紛争としての内戦にようやく終わりが見えてきた2017年。戦禍で荒廃した人々の生活の立て直しなど問題は山積みだと思いますが、難民としてシリアからのオランダにやってきたおよそ5万人の難民申請者のうち、9割が滞在許可を取得して、自分の住居を得ているということです。その後の問題は、仕事が見つからないこと。仕事がないため、なかなか社会になじめないという状況もありますが、それに対するプロジェクトもあちらこちらで始まっています。
難民申請中に無償のボランティア活動を許可して、オランダ語や社会生活について早く学べるような仕組みを作ったり、デン・ハーグの市役所は50名の難民を雇用したそうです。元刑務所が新興住宅地に生まれ変わるまでの1年ちょっとの間、その空いた空間をホテルとして経営し、ホテル業のプロからトレーニングを受けたシリア難民に任せる、というプロジェクトもあります。
http://eurocupgolf.eu/bazaar/home/show/2001

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食の分野でいうと、ユトレヒトには2016年6月に、シリア難民の働くレストランRestaurant SYRがオープンしました。クラウドファンディングで3週間のうちに500人以上のインベスターを集め、目標額の€165,000を達成。初年度の利益の一部は、難民の教育基金(Foundation for Refugee Students UAF)へも寄付されました。
https://crowdaboutnow.nl/campagnes/syr

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そんなRestaurant SYRを訪ねに、金曜遅めのランチに間に合うよう、ユトレヒトへ向かいました。駅の東側、ユトレヒト大学から南へ下った静かなエリアにありました。

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定期的にオランダ語 / アラビア語のワークショップやボランティアやスタッフとの交流会、展示なども行われる店内。大きな窓に面した店内のインテリアはシンプルで居心地よい。

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メニューには、シリア料理をヨーロッパテイストにアレンジしたものが並びます。メニュー選びに迷ったら、こちらのSYRプレートを(1人前12.75 euro / 2人前より)。(写真上から時計回りに)シリアで主食の平たいパン「ホブズ」、ひよこ豆のコロッケ、ファラフェル、スパイシーなひよこ豆のフムス、小麦を粉にせずそのまま挽き割りにしたブルグルとヨーグルトを発酵させた「キシュク」、ブルグルを使ったタブレサラダはフレッシュなイタリアンパセリが効いています。焼きなすとタヒニのペースト「ババガヌーシュ」に中央にはゴマを使ったタヒニソース。トマトスープとドリンク付き。特にファラフェル、絶品でした!

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ドリンクは、オススメのシリアンティーを。ダマスクス産のローズ、カモミールなど数種のハーブがブレンドしてあります。

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異文化のミクスチャーは料理だけでなく、働くスタッフに関しても同様です。およそ20名のスタッフのうち、約半数がシリアからの難民、若干名はエジプトやほかの国からの難民、あとの半分がオランダ人という構成です。オランダは多民族国家なので、パッと見ただけで出身地がわからないことも多々あります。

ていねいにメニューの説明してくれた笑顔のさわやかな男性スタッフに、もう少し話を聞くことにしました。
「ここで働くには滞在許可(VISA)を持っていることが条件とあったんですが、難民の方がオランダで滞在許可を取るのは大変なんでしょうか?」
「そうでもないと思う。ここに来るまでが大変だから」
「あなたはユトレヒト出身ですか?」
「いやいや、僕も3年前にシリアから来たんだよ」
「そうだったんですね…ここに来るまですごく大変でしたよね?満員のボートやトラックで来たりしたのですか?」
「今シリアにいる人は、なかなか近隣諸国へ出るのも大変な状況になってしまったけれど、3年前はまだ例えば隣のレバノンにいけば、そこから飛行機で他国へ飛ぶことができたんだ」
「シリアではどんなことをやってたんですか?」
「ITのエンジニアさ。結構ビジネスも上手くいってたんだ。自分の店(インターネットカフェなど)もいくつか持っていたし。
シリアは本当に美しい国さ。アフリカと中東両方の文化が混ざり合った独特な場所で、自然もたくさんある。本当は離れたくなかったよ」
「どうして国を離れたんですか?情勢が悪くなったから?」
「子供が亡くなったんだ、家が爆撃されて…それで決心した」

思いがけない事実を聞いてしまい、不躾な質問をお詫びしましたが、彼は「料理を楽しんでね」と静かな笑顔を絶やしませんでした。ニュースを読んで情勢を知っているかのように思ってしまっていましたが、彼の生の言葉は心に直接刺さりました。

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写真左が話をしてくれたイヤドさん。写真右はユトレヒト生まれのオランダ人、フリーダさん。「どんな国籍やバックグラウンドでも、対等でいられるのが心地よいわ」

ディナーは基本的にほぼ毎日オープンですが、ランチは金〜日のみ。「できるだけオーガニックの食材を使う」というポリシーの3コースディナーは€ 27.50。
※グルテンフリー、ヴィーガン、ハラルの希望は1日前までにお店に要コンタクト。

Restaurant SYR
http://restaurantsyr.nl/
Lange Nieuwstraat 71 3512 PE, Utrecht

Photo by Asami Uchida
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