海藻をパスタに見立てた革新的なフード・スタートアップ「I SEA PASTA」

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(c) Seamorefood.com

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家族のバケーションで訪れたスペイン、イビザ島。レストランで妻のオーダーした海藻サラダを、パスタ(タリアテッレ)と勘違いしたことから「それなら世界中を騙してやろう」とひらめいた一人のオランダ人がいました。 ウィレム・ソダーランド氏は、海藻をパスタに見立てた「I SEA PASTA」を製品化し、2015年にはKetchum Food Lab-competitionにて、最も革新的なフード・スタートアップとして選ばれました。 海に囲まれた日本では、海藻はとても身近な食べ物ですが、それが今、地球上で最もパワフルな植物の一つで、未来の食糧危機にも有効な解決策のひとつとなるとして注目を集めているのです。

Nederland, Amsterdam, 21-05-2015 Willem Sonderland van zeewierimporteur SeaMore Foods met een bordje zeewier Foto Marco Okhuizen

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世界の人口は、2050年には90億人を超えるといわれており、このままいけば深刻な食糧危機に見舞われるといわれていますが、その中で、土壌も真水も農薬も必要としない海藻は、環境負荷の少ない食べ物として注目されています。

また、海藻にはビタミンやミネラル、タンパク質、植物繊維が豊富なため、その栄養価はアサイーやチアシードに匹敵するほどなので「まさに海のスーパーフードだ」として世界のセレブリティからも価値が見直されています。小麦を使ったパスタと違ってグルテンを含まず、カロリーや糖質が抑えられる点も、ヘルシーな食を求める人には評価されています。

地球上には、およそ10,000種の海藻が5億年も前から存在しているそうですが、 そのうち、ヒジキにワカメに昆布など、よく知られているのはわずか20種類ほど。このパスタに使われているのは、ヒマンタリアという種類の海藻で、スペイン、ポルトガル、アイルランド、ブルターニュ、イングランド南部、ノルウェーのみで繁殖する種で、日本では見かけたことがないめずらしい海藻です。岩の上で成長し、長さ2.5メートルまで成長します。別名「海のスパゲッティ」とも呼ばれているだけあって、たしかに食感や見た目がタリアテッレに近いものがあります。 水質の良い、大西洋に面したアイルランド沿岸で育ったこのパスタ用の海藻は、収穫後、真水で不純物をきれいに取り除かれた後に、乾燥させてパッキングされます。海藻の加工製品ではなく、海藻そのものなのです。オランダから花を運ぶトラックが、アイルランドで荷下ろしした後、この「I SEA PASTA」を運んで帰っていきます。繁殖地のうち15パーセントだけを収穫して、すべてを刈り取らないよう、収穫量を調整しています。

Photography Jan Wischnewski

Photography Jan Wischnewski

調理方法は、お湯で20分ほど茹でて通常のパスタと同じようにソースと絡めるだけ。想像よりも磯の香りは控えめでプレーンな味なので、ソースと絡むとパスタの代わりを十分に果たしてくれます。特に、バジルを使ったジェノベーゼ(ペスト)ソースとの相性は抜群でした。より磯の香りを楽しみたい人は、単に45分以上浸水させて、サラダとして食べるのもおすすめです。 ウィレム氏は「人にやさしく、地球にもやさしい食べものが、必要以上に高価であってはならないし、食べやすくておいしくあるべきだ」という考えのもと、パンやスナックなど、今後も海藻を使った製品を増やしていきたいと話しています。すでにパスタ以外にも、海藻をベーコンに見立てた「I SEA BACON」も販売がはじまりましたが、クリスピーでおつまみに最適な味でした。 知らず知らずに日々食べていた海藻が、未来の食問題に貢献できるものだなんて、これからもっとたくさん海藻をおいしく食べたいですね。

I SEA PASTA / SEAMORE
seamorefood.com