ヴィーガン&ベジタリアン餃子のファーストフードとサステイナブルの融合

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ここ数年、ラーメン屋、居酒屋といった日本食レストランのオープンラッシュだったベルリン。最近ではすっかり市民権を得ているかのごとく人気のラーメンはストリートフードフェスの主役となり、様々な形で多数開催されている。そこに付随するかのごとく頭角を現してきたのが餃子である。餃子メインというPOP UPイベントの増加や先日もミッテのショッピングエリアにうどんと餃子の専門店がオープンしたばかりで話題を呼んでいる。ミシュランのような専門家による評価や味のクオリティーよりも”話題性”や”クール・ピープルが集っている”ことが重要視されるベルリンにおいて、舌の肥えた日本人が本当に満足いくような日本食に出会うことはなかなか難しい。しかし、店舗数が増えることによって選択肢が広がり、競合同士のレベルアップにも繋がればベルリン在住の私たち日本人も嬉しい限りである。

ストリートフードマーケットへの出店から始まり、場所を借りて期間限定でPOP UPを開催、そして出店へと夢を実現させていくのがベルリンドリームの一連の流れとなっているが、次なるキーアイテムは餃子となるのだろうか?

そんな今回は、ベルリンらしい要素が沢山詰まったベジタリアン&ヴィーガン餃子の専門店『momos』を紹介したい。餃子と言っても様々な種類が存在するが、同店はチベットのソウルフードである”モモ”がベースとなっており、通常の餃子より皮が厚めなのが特徴。そして、遺伝子組み換えが行われておらず、添加剤や防腐剤が一切入っていない食材を使用しており、そのほとんどがビオ認定を受けているベルリンとその近郊の農家から仕入れる地産地消のスタイルを徹底している。そして、皮、具材、ディップに至るまで全て手作りで行われている。

ここまではもはやベルリンのベジタリアン&ヴィーガン専門の飲食店では基本となっているが、オーガニック、菜食主義ときたら、それにまつわる何かしらの社会活動を行っていることも注目すべき点である。同店は、ドイツの環境団体が作った自然エネルギー(再生可能エネルギー)のみを供給しているドイツ最大手のNaturstromと契約しており、日本と違い電力会社を自由に選べるドイツならではと言える。また、SDGsの加盟企業であるGreentableのメンバーとして、飲食店で可能な活動を最大限に行っている。SDGsとは「Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標」の略であり、国連本部で日本を含む193の加盟国の合意の下採択された「世界を変革するための17の目標」のこと。この17の目標を全てクリアさせて持続可能で平和な世界を目指すことを掲げている。

「SDGs」に関してはこちらのサイトに分かりやすく説明が記載されています。

【1分で分かる】世界を変革するための17の目標「SDGs」

飲食店が主に行っていることは、フェアトレードの食材を使用、廃棄処分を減らす努力、リサイクル可能な素材を使用するなどが挙げられ、肉を使用していないため、動物愛護にも繋がっている。特筆すべきは、こういった社会的活動を行いながら、一見その真逆にありそう”ファーストフード店”として打ち出している点である。

まず店内はポップでモダンなデザインの広々した空間になっており、カウンターでオーダーするセルフサービススタイル。6種類あるモモの中からサイズによって2、3種類選べるようになっている。サイズは、SNACK=8個、MEDIUM=14個、LARGE=18個、SOUP=10個となっており、好きなディップもスパイシーなサルサソース、ヨーグルト、ミント、ソイセサミから選べる。

通常、モモは蒸し餃子が基本であるが、ここでは焼きも選べるようになっており、両方オーダーすることも可能。皮が厚いため焼くと固くなってしまい、若干食べにくくなるため、正直なところ個人的には蒸して食べるのをおすすめしたい。

人気メニューは、ポテト&キャベツ&人参とカボチャ&ひよこ豆の2種類。一つのサイズも小さめで食べやすいためスナック感覚でいくらでも食べれてしまうが、ほとんどの食材が野菜ということもあって罪悪感なく食べれるのも嬉しい。全てオーガニックで良質な素材を使用していながら、SNACKサイズ(8個)で5.9ユーロは良心的と言えるだろう。

また、Oranienburger Str.というミッテのショッピングエリアから程近いこともあり、客層は若いカップルが圧倒的に多く、餃子がトレンドになりつつ証拠と言える。店内のアナウンスボードが全て英語で記載されているのもベルリンならでは。同店はまだ一店舗のみだが、このような気軽なファーストフードスタイルを提供することで、若い世代のオーガニックや菜食主義への関心が高まり、店舗を利用することによって、SDGsの活動に自然と加担していることになるため、今後の展開に注目したい。


momos
Chausseestr.2 10115 Berlin
https://momos-berlin.de/

Author: 宮沢香奈/Kana Miyazawa
ライター、コラムニスト、コーディネーター

長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーを取材するなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’s FUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。

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