3日かけてグラインドし、カカオの中枢に眠るフレイバーを引き出す。豆から作る極上のチョコレート、Macao Movement

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アムステルダムでチョコレートづくりに挑むMacao Movementを訪れました。

マルーとは市内のチョコレート店に商品の営業をしている最中に出会って、その時にいただいたローストカカオビーンズがめちゃくちゃ美味しくて。アトリエを構えたらそこにお招きするわよ、と言われていたんです。場所はアムステルダムウェスト、中央駅からバスに乗って20分、たどり着くとどうやらオルタナティブなビル、展示アートなどが目につく。2階のアトリエは、小さな区画にキッチンの部屋と収納のスペースに仕切られやや殺伐としていた。それは彼女がまだ引っ越してきて間もないから。

キッチンに入るとまずチョコレートメランジェを覗き込むマルー。「出勤するとコートを脱ぐ前についチョコレートの状態を覗いてチェックしてしまうの。」そのメランジェのなかには少量のカカオが回っている。「3日かけて、グラインドしてカカオの中枢に眠っているフレイバーを引き出すのよ。3日間という期間は、試行錯誤でたどりついたの。」「香りがするから、近くにどうぞ。」匂いをかがせてもらうと、ピュアなカカオの奥深く甘い香り。

このオルタナティブビルはXpositronといって、非営利団体の手がけるプロジェクトの一環。長く空き家になっていた作業工場跡のビルをサステイナブルに有効活用しようという企画で、市が助成金を出している。屋上ルーフトップにはずらりとソーラーパネルが並んでいる。ビル全体の電力はこのクリーンエネルギーで賄われているそう。皆の集うリビングルームがあり、ビル入居者全員が当番制で掃除したり、カフェコーナーのコーヒーやティーの補充を行なうシェアオフィス。もともと、マルーのお兄さんがシロップ製造のスペースをここでレンタルしていて、別フロアのキッチンに空き募集が出たことを知り、即入居を決めたそう。

チョコレートづくりをはじめるに至った経緯をマルーに聞いてみた。「きっかけは、3年前にコスタリカを旅行していた時なの。現地の友人と自転車に乗ってるとカカオの木が自生してて、友人が茂みに入って行き、木からフルーツをもぎ取ってきてくれて。皮をむいてフルーツを食べると美味しくて。わたしは、それまでチョコレートはたくさん食べてきたけど、カカオについて全くどんな形でどう育っているかを知らなかったので、初めて見たカカオのフルーツにとても興奮したの。それで家にもどると、テラスのテーブルにそのカカオフルーツを置きっぱにしたの。1週間くらいして、その現地の友人がやってきて、テーブルの上のカカオフルーツを見るやいなや、チョコレートを作ろうってことになって。えー、このフルーツからどうやってチョコレートを作るの?とハテナだったわたしは興味津々で。中の種子部分(これをカカオビーンズって呼んでるよね)を香ばしく炒って、それからスパイス用の石臼(すり鉢)でグラインドをしはじめたの。ちょっとずつ粉になって、それから湿ってきたら砂糖を加えてさらにグラインドすると濃いペーストのようになって、よし飲もうって。カカオを飲むっていうのも初めてで、儀式のようで、それはこの世のものと思えないフレイバフルで、カカオの恋に落ちてしまったのよ。」

「アムステルダムへ戻ってきて、何気なく食べるチョコレートが一体どうやってできているのか、というのをオランダ人に知ってほしいと思って、カカオ豆にこだわって、本来のナチュラルなチョコレート制作をはじめたの。」


新しいチョコレートバーの制作途中で、見せてくれたのはリッチなローステドミルクチョコレートやソルテドアーモンドチョコレートなど。


作業風景。イベント出店も行なっていて、Amsterdam市内では、たとえばIXCACAOのカカオセレモニー。Ecstatic Danceとのコラボを果たしている。


商品パッケージを新しくしたカカオショット。これは飲食店で簡単に提供できるためのメルトボタン。1個を熱湯30cc〜50ccでよく溶くだけ。(濃度はお好みで)


もともとは、「家庭用のチョコレートづくりキット」を開発して販売していた。

Macao Movement
https://www.macaomovement.com
https://www.instagram.com/macaomovement/

Author : ナチェフめぐみ
プラントベースの料理家、フードコンサルタント。東京にてベジタリアンカフェのオーナーシェフを10年つとめたのち、2014年よりオランダ在住。現在は、自然の中で暮らしながら、ホリスティックな食事やヨガなどオルタナティブなカルチャーなどのライフスタイルを提案している。
http://www.meguminachev.com